文書生活 : TEXT LIFE

文書のある生活

The metropolitan museum of artとコーヒー

ずいぶんと昔の話だが、大学院を卒業して社会人になる前の数週間、バンドメンバー2名(VoのSっちー、BのS)と一緒にNew Yorkに遊びに行った。本当はバンドメンバーはもう一人(DrのGちゃん)いたのだが、そいつは卒業出来なかったので来なかった。

ホテル代を浮かせるためにアパートを借りて滞在していた。場所は比較的治安の良いThe Central Parkの南西の角に近い場所だったと思う。近くに韓国系の小さなスーパーとZABAR'Sというスーパーがあって、食事はだいたいそこで調達して、アパートのキッチンで簡単な料理を作っていた。牛乳とオレンジジュースを1ガロンずつ買って3人で飲んでた。

当時のNew Yorkは今よりも遥かに治安が悪かったが、セキュリティはそれほど厳しくなくて、非常にスリリングで緊張感と興奮が混じり合ったハイテンションな毎日を過ごしていた。地下鉄は落書きだらけで、車両の連結部にはポリスが防弾チョッキとドデカイ拳銃をぶら下げてガンを飛ばしまくってた。夜中にパンパンと乾いた音がしていたりした。本物の銃声は爆竹より軽い音なんだと知った。

滞在中は3人で行動していた訳でもなくて、勝手気ままに行きたい場所へと彷徨っていた。たいてい晩ごはんの時に明日の予定を共有して、気が合えば一緒に行くし、合わなければ一人で行く。付き合いの長いメンバーだから出来る自由行動だ。

で、自分は何をしていたかと言えば、毎日のようにメトロポリタン、The Metropolitan Museum of Artに通っていた。まだ学生証が有効だったので学割で1 month Passが格安で買えた。毎日長い時間を過ごしていたが、それでも全部は見てないだろう。メソポタミア遺跡、エジプトのミイラとか浮世絵も沢山あって、戦争に勝つということはこういうことなのだと実感した。

Museum Shopがすごく充実していて、その中にほぼ総目録と思われる大きな本が半額セールで売っていたので30ドルぐらいで買った。調子に乗ってアンディ・ウォーホルの回顧展全集も買ってしまったのだが、2冊合わせて6kgぐらいある。非常に重たい。スーツケースに入れると重量オーバーになるので、手荷物として日本に持ち帰ってきた。見応えのある本で飽きなかったのだが、ここ10年ぐらいは開いていない。もったいないことに本棚の飾りとなっている。最近の自粛生活の中で部屋の片付けをしていたら、この本の存在を再確認したのだ。

そんな時に、会社の同僚の娘さんが絵が好きで、またその絵が非常に上手い、という話を聞いた。ずっと前にもその話を聞いたことがあって、その時は手持ちで使ってない色鉛筆48色セット(今は倒産したベロール社製の油性色鉛筆)を差し上げた。現在は小学校高学年になって、絵画教室を卒業することになって、娘さんが悩んでいるとか。。。という話を聞いて、ならば、その読んでない総目録とアンディ・ウォーホル全集を差し上げるとこにした。何かの刺激になれば良いなあと。自分の大切な本だが、読まなければ意味がないので、同僚の娘さんが読んでくれれば嬉しい。ついでに、やっぱり読まなくなった岡本太郎画集とダビンチの画集も合わせて送った。

同僚から本が届いたとの連絡があって、娘さんは本を全部抱えて、即座に自室に引きこもったとのこと。素晴らしい。将来有望だ。

その本のお礼にと紅茶とコーヒーを頂いた。コーヒーはひいてない豆の状態だったので、この機会にコーヒーミルを買ってみることにした。自分がコーヒー豆をひいてコーヒーを飲むことなど、想像も出来なかったなあ。昨年までコーヒーがキライだったから。